警察山岳救助隊は全国で組織されていますが、大都会・東京にも存在します。 「東京に山があるの?」と思われるかもしれませんが、実は東京都の面積の4割が森林に覆われた山です。 ミシュランガイドにも掲載されている高尾山をはじめ、奥多摩の秩父山地、東京都最高峰の雲取山など、登山のエリアも多くあります。 登山者が登れば、どうしても避けられないのが山岳遭難。それに備えるべく、警視庁は高尾署、青梅署、五日市警察署に山岳救助隊を置いています。 登山者から救助要請があると、まず山岳救助隊を兼ねた駐在所の警察官が、直ちに急行します。 そして事案によって、本署からも山岳救助隊が出動するといい、現場では消防隊員と連携して、救助活動にあたります。 そして、山岳救助隊が出動するのにあたって欠かせないのが、専用の警察車両です。 高尾署山岳救助隊には、2020年にスズキ「クロスビー」が配備されています。 高尾山は年間300万人が登る山で、登山者の数は世界一です。 その層はさまざまで、登山未経験者も多いというのが、高尾山の特徴でもあります。 救助要請のなかには、ちょっと脚をくじいたとか、疲労で歩けないなど、救急車を使うまでには至らない場合も少なくありません。 状況によっては、このクロスビーに載せて下山させることもしばしばあるのだといいます。 そんなクロスビーはキュートなデザインですが、山岳救助隊仕様の外装には専用装備が付けられており、やはり警察車両としての迫力を醸し出しています。 筆者も登山愛好家で、各地の山麓で警察山岳救助隊の車両を見ていますが、クロスビーというのは希有。大抵は日産「エクストレイル」など、SUVが多いように思います。 しかし、ここにクロスビーが配備されているのは、この地域の事情もありました。高尾警察署山岳救助隊の山崎泰正警部補(「崎」は旧字体)に聞きました。 「三菱パジェロも配備されていますが、もっと小回りの利くクロスオーバータイプの車種の配備を要望しました。その結果、クロスビーになったのです」 高尾署山岳救助隊が管轄している高尾山系は、非常に狭い道が多い地域で、場所によっては林道も存在。 現場付近に迅速に向かうには、コンパクトで最低地上高が十分にあるクルマが向いているといいます。 「高尾山に一号路という登山道があるのですが、ここは急カーブがあるつづら折りの道です。 大きな三菱『パジェロ』では切り返しが多く必要になります。このクロスビーなら、スピーディに山の上まで行けますね」(山崎さん)
珍しい山岳救助隊仕様の「クロスビー」見た目の特徴は?
改めて山岳救助隊仕様のクロスビーを見てみると、まず独特のカラーが目に入ります。 警察車両というと、白黒や青白というカラーリングが一般的ですが、この車両は明るめの緑。 これは警視庁に配備される災害対策用車両に使われるカラーで、このクロスビーもそれに属しているのだといいます。 ルーフ前部とグリルにはお馴染みの赤色灯、そしてルーフ上には大きなシルバーのボックスが載っています。 そのサイド、後方には周囲からの視認性を高める小型の赤色灯を装着。ちなみにボックスのなかには、重傷の要救助者を運ぶ折り畳み式タンカが収納されています。 さらにボックスの前部には、夜間の現場を照らすためのサーチライトを装備。ライトは、コントローラーで照射方向を変えられます。 車内は赤色灯などのスイッチ、消火器以外は目立った装備はありません。 残念ながらインパネは見られなかったものの、一部にベース車のクリーム色が残っているのもおもしろいところです。 後部には隊員の個人装備が積載されており、常時出動態勢を整えており、どことなく緊張感が漂っていました。
荷室にはさまざまな装備品が搭載される高尾署山岳救助隊に配備されたスズキ「クロスビー」
ちなみに、コンパクトなクルマといえば、同じスズキ「ジムニー」や「ハスラー」でもいい気がするのですが、そこにもクロスビーである理由がありました。 「やはりジムニーなどの軽自動車だと、少しパワーが足りないという理由もあります。 出動時には最大3名が車両に同乗することがありますし、車両に救助者を乗せて下山する場合もあります。そのため、やはり後部ドアがあったほうがいいですね」 ※ ※ ※ 週末ともなれば、多くの人で賑わう世界一の山・高尾山では、年間で70回から80回の出動があるといいます。 登山者が楽しく登れるのは、ほかならぬ高尾署山岳救助隊とクロスビーの陰なるサポートがあるからではないでしょうか。
すごいですね~クロスビー 可愛いですね(笑)