「初心忘るべからず」という言葉には、「最初に始めた時の気持ちを大切にしなさい」という現代訳が当てられます。新入社員に向けて使われることも多いこの言葉ですが、語源は能を大成させた世阿弥の書『花鏡』に出てくる言葉です。古くからの教えが、語り継がれているのは、それだけ深い意味が込められているからこそでしょう。

 「初心を忘れず」という言葉は、よく耳にするがゆえに、日常の中でつい聞き流してしまいがちですが、あらためてその意味を噛みしめてみると、生活の中心に据える価値のある、力強い言葉だと感じます。

 結婚生活においても、「初心を忘れないこと」はとても大切なのではないでしょうか。初めて出会った時の喜び、婚約した日の喜び、結婚式の感動 ー それらの気持ちはすべて、忘れてはいけない「初心」に繋がっているように思います。その日の気持ちを大切にし続けることができれば、難しい出来事に直面しても、二人で乗り越えていくことができるでしょう。

 仕事においても新しい環境に飛び込んだばかりの頃の謙虚な気持ちや、一生懸命取り組んだ日々の姿勢を、立ち止まって思い出すことが大切だと思います。自分自身も行き詰まりを感じたり、迷いが生じたりしたときには、昔の手帳を読み返してみたりします。そうすると不思議と気持ちが切り替り、前向きな方向にスイッチが入るような気がします。

 初心を忘れずに、一歩ずつ歩んでいくつもりです。