婚活を始めた人の多くが、最初は前向きな気持ちを持っています。新しい出会いがあるかもしれないという期待や、未来が少しだけ開けるような感覚があって、スマートフォンの画面を開く指先にもどこか希望が混ざっている。けれど数か月が過ぎるころ、その気持ちは静かに形を変えていきます。出会いはあるのに、なぜか満たされない。人と会っているのに、なぜか孤独が深くなる。そんな言葉にならない違和感を抱えながら、今日もまたアプリを閉じる。そんな夜を、何度も繰り返してしまう人が少なくありません。

うまくいかない理由を考えると、多くの人は自分を責めます。もっと積極的に動くべきだったのかもしれない。写真が悪いのかもしれない。話し方がつまらないのかもしれない。改善点を探し始めると、いくらでも見つかってしまう。そして気づけば、婚活は「出会いを楽しむもの」ではなく「減点されないように努力するもの」に変わっていきます。本来は誰かと幸せになるための時間なのに、自分を削る作業のようになってしまうのです。

けれど本当に足りないのは、努力や工夫なのでしょうか。たくさんの人と会い、たくさん考え、十分すぎるほど頑張っているのに、それでも苦しいと感じるのだとしたら、問題は別のところにあるのかもしれません。私は、婚活が疲れてしまう一番の理由は「心を整える時間がないこと」だと感じています。次の予定、次の連絡、次の出会いへと追われる中で、自分の気持ちをゆっくり確かめる瞬間がほとんどない。これでは、どこへ向かいたいのかさえ見失ってしまいます。

本当は、結婚相手を探す前に考えるべきことがあります。どんな毎日を送りたいのか。どんなときに安心できるのか。どんな相手となら自然に笑っていられるのか。それは条件表では測れない、とても個人的で繊細な感覚です。しかし忙しい婚活の流れの中では、そうした感覚は後回しにされがちです。年収や年齢や職業といった分かりやすい情報ばかりに目が向き、本当の気持ちは置き去りにされてしまう。そして「なんとなく違う」という出会いを何度も繰り返して、さらに疲れていくのです。

最近、結婚相談所を訪れる人たちの話を聞いていると、少し変化が起きていることに気づきます。以前のように「早く結婚したい」という焦りからではなく、「一度ちゃんと立ち止まりたい」という理由で足を運ぶ人が増えているのです。すぐに相手を紹介してほしいわけではなく、まずは自分の気持ちを整理したい。誰かに話を聞いてもらいながら、自分が何を望んでいるのかを確かめたい。そんな静かな動機が、そこにはあります。

第三者と話す時間は、不思議なくらい心を軽くします。頭の中で絡まっていた思考が、言葉にすることで少しずつほどけていく。自分では短所だと思っていた性格が、実は魅力だったと気づくこともある。焦らなくてもいいのだと分かった瞬間、呼吸が深くなる。その状態になって初めて、人は自然体で誰かと向き合えるのだと思います。無理に良く見せようとしなくてもいい関係は、最初からどこかあたたかいものです。

結婚はゴールではなく、その先に長く続く生活の始まりです。だからこそ勢いよりも納得が大切になります。条件の正しさよりも、一緒にいるときの安心感のほうが、ずっと価値がある。ゆっくり選んだご縁ほど、後悔が少ない。そんな当たり前のことを、私たちは忙しさの中で忘れてしまいがちです。

もし今、婚活に少し疲れているのなら、無理に前へ進もうとしなくてもいいのかもしれません。立ち止まることは後退ではありません。自分の足元を確かめる、大切な時間です。誰かに話を聞いてもらうだけでも、景色は変わります。出会いを増やす前に、心を整える。その順番を選ぶ人が増えたとき、婚活はもっとやさしいものになるはずです。

 

焦らなくていい。比べなくていい。あなたの歩幅で進めばいい。静かな場所で自分の声に耳を澄ませたとき、本当に必要なご縁は、きっと自然な形で目の前に現れます。人生をともに歩く相手は、競争の先ではなく、穏やかな心の先にいるのだから。そんな当たり前の真実を、忘れないでいたいと私は思います。