4月11日、海外から日本に入国した人から「XE」と呼ばれるオミクロン株BA.1とBA.2の組替え体が初めて検出されたことが発表されました。
この「XE」とは、どういった特徴を持つウイルスなのでしょうか。
新型コロナウイルスの組換え体とは?
組換え体は、2種類以上の変異株に同時に感染することで、感染者の体内でそれらの遺伝子が混ざり合って発生するものです。
新型コロナウイルスはヒトだけでなく動物にも感染することがあるため、動物の体内で組み換えが起こることもあります。
複数の変異株が同時に流行している状況下における新型コロナウイルスの組換えは珍しいことではなく、新型コロナウイルス感染症の流行が始まってから、いくつかの組換え体が確認されています。
日本でも2021年10月にアルファ株とデルタ株との組換え体が見つかっています。
しかし、これまではこれらの組換え体が他の変異株よりも感染力が強く拡大したという事例はありませんでした。
オミクロン株BA.1とBA.2の組替え体「XE」
オミクロン株BA.1とBA.2の組換え体「XE」は、2022年1月19日にイギリスで初めて報告されました。
オミクロン株は、日本でも第6波の主流であったBA.1と、より感染力が強いとされているBA.2、そしてBA.3に分かれていました。
現在は新たにBA.4、BA.5まで分類されています。
このBA.1とBA.2の組換え体が「XE」と呼ばれており、4月5日までにイギリス国内で合計1098例が確認されています。
日本では3月26日に入国した症例からXEが検出され、4月11日に発表されました。
日本以外にも、すでにアメリカ、デンマーク、アイルランド、インドやタイなど、複数の国で見つかっています。
オミクロン株同士の組替え体は、XE以外にも世界中で報告されていますが、今のところ継続的に感染者が増えている状況にはないようです。
オミクロン株同士の組替え体だけでなく、BA.1とデルタ株との組替え体(通称デルタクロン)も海外で報告されています。
XD、XFという組替え体が、それぞれフランス、イギリスから報告されていますが、現時点では感染者がどんどん増えているという状況にはありません。
組替え体「XE」について分かっていること
イギリス保健安全保障庁の解析では、XEはBA.2と比べて12.6〜20.9%感染力が強いとされています。
しかし、1月19日に最初の症例が報告されてから、これまでに1100例程度の報告数ですので、オミクロン株が世界で最初に見つかってから世界中で爆発的に広がったときのような凄まじい広がり方は今のところしていません。
XEの感染力についての評価は、現時点ではまだ確定的なものではなく、今後の評価が待たれます。
同様に、XEに感染した人の重症度や、ワクチンによる予防効果については十分な情報がありません。
BA.1とBA.2の組替え体であることから、モノクローナル抗体という治療薬の有効性は低下していると考えられますが、レムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビルといった抗ウイルス薬の有効性はおそらく変わらないと思われます。
引き続きXE、そして新たに出現する変異株の広がりをモニタリングしていくことが重要です。
XEが日本で検出されたとしても、私たち一人ひとりにできる感染対策は変わりません。
手洗いや3つの密を避ける、マスクを着用するなどの感染対策をこれまで通りしっかりと続けることが重要です。
特にマスクを外した状態での会話が感染リスクとなりやすいことから、会食や職場の昼食時などは黙食・マスク会食を心がけるようにしましょう。
ゴールデンウィークを控えこれから人の移動が多くなりますが、大人数が集まっての会食は避けるようにしましょう。
また、高齢者や基礎疾患のある方においては新型コロナワクチンのブースター接種で重症化予防効果を再び高めることが重要です。
ただし、ワクチンだけで感染を防ぎ切ることは困難であり、ワクチン接種後もこれまで通りの感染対策は続けるようにしましょう。