結論から言うと、変化の原因は新型コロナウイルスによる影響だ。実際、新型コロナウイルス感染拡大前である2019年度の調査では、座席の座り方(詰めない・足を伸ばす等)と乗降時のマナー(扉付近で妨げる等)のほかに、 「荷物の持ち方・置き方」 が3位に入っていた。 しかし2020年度になると、「荷物の持ち方・置き方」が6位にダウンし、代わりに「騒々しい会話・はしゃぎまわり」が2位にランクインした。そして同項目は2021年度の調査で1位になり、最新の2022年度でも2位に上がったのだ。 もしかすると、「荷物の持ち方・置き方は2019年度に偶然上位に入っただけ」と思う人もいるかもしれないが、同項目に関しては2017~2019年度までの間、3年連続で迷惑行為トップ3のひとつだった。 それにも関わらず2020年度から「騒々しい会話・はしゃぎまわり」が急上昇してきたのは、コロナの飛沫(ひまつ)感染を懸念する人が増えたからだろう。 実際、迷惑だと感じる行為には「電車の床に座る」「車内での化粧」「酔っ払った状態での乗車」など数多くの項目が挙げられていたものの、2020~2022年度にかけて「周囲に配慮せず咳やくしゃみをする」という項目が常にトップ5以内に入っていた。 もちろん、コロナの流行でマスク文化も定着したが、現実問題としてマスクを着けない人が乗車するケースも少なくない。同調査では、2021年度と2022年度に「新型コロナウイルス感染症がまん延する中で、電車利用時に気になること」という質問も実施。その結果、どちらの年度でも「マスクの未着用者」という回答が過半数を占めてトップに。また2位の「周囲の人の会話」といった回答も約半数に上った。 インターネット上でも 「電車内でマスクをしていない人がいて、口論に発展したことがある」 「マスクを着け忘れて乗車した時の周りの目線が怖すぎた」 「たとえマスク越しであっても、電車内の会話は気になってしまう」 などの声が見られるため、コロナ禍では会話をする人やマスクをしない人に対してより敏感になっているのだろう。
関東と関西で異なる迷惑の性質
日本各地では電車内における迷惑行為が絶えないが、関東と関西では迷惑に感じる行為がやや異なるようだ。 日本民営鉄道協会が行った同調査(2022年度)では、関東私鉄9社と関西私鉄5社で比較。関東は1位「騒々しい会話・はしゃぎまわり」、2位「座席の座り方(詰めない・足を伸ばす等)」、3位「乗降時のマナー(扉付近で妨げる等)」の順であったのに対し、関西は ・1位:荷物の持ち方・置き方 ・2位:騒々しい会話・はしゃぎまわり ・3位:座席の座り方(詰めない・足を伸ばす等) という結果となった。 このように東西で結果が異なるのは、地域性の違いがあるからだ。実際、関東と関西ではそれぞれ迷惑行為防止の策が講じられている。 例えば関東は比較的人の流れが多いため、JR東日本や関東私鉄は、新型コロナウイルスのまん延防止策として会話を控えるよう呼びかけている。一方、関西では関東ほど人は多くないものの、リュックサックなど大きな荷物が普及・多様化したため、関西の鉄道事業者20社局合同で、荷物の持ち方に関する啓発活動が行われている。 こういった活動を見ると、関東の1位と関西の1位の結果には納得いく。
逆に以前よりも改善された迷惑行為
逆にあまり見かけなくなった迷惑行為もある。 まずひとつ目は、ヘッドホンからの音漏れである。日本民営鉄道協会が行った調査でも「迷惑行為項目」に入ってはいるが、近年では技術の発達により骨伝導タイプや音漏れしにくいヘッドホンが普及したことで改善された。 もうひとつは、決められたスペース以外での喫煙である。かつて一部の電車や新幹線には灰皿や喫煙車、もしくは喫煙スペースが用意されていたが、2020年改正健康増進法の施行によって、駅の喫煙スペースを含めすべてが撤去・禁止になった。そのため2021年度以降の同調査からも、「決められた場所以外での喫煙」という迷惑行為項目は外されている。 ちなみに喫煙に限った話だが、厚生労働省国民健康・栄養調査によると、令和元年度における成人の喫煙率は平均16.7%という結果が出ており、ここ10年で減少傾向に。たばこ税増加が後押ししている影響もあり、駅や電車内での喫煙マナーは改善されたように思える。
迷惑行為をなくせるのか
ひとりひとりの境目が区切られている電車の座席(画像:写真AC)
ではこの先、電車内における迷惑行為をなくすことはできるのだろうか。 近年、日本民営鉄道協会やJRなどは、注意喚起のポスター掲示や車内放送をはじめとしたマナーアップのための啓発活動を行っている。 また電車の新型車両にも少しずつ工夫がなされてきた。例えば「座席の座り方」を少しでも改善できるように、座席がひとりずつセパレートされているロングシートや、ドアの乗降時に人の邪魔にならないようドア横のスペースが確保されている車両などが登場した。 SNSでは「お年寄りや妊婦に席を譲った」などの心温まるエピソードもよく見かける。このような風景が当たり前と思えるように、迷惑行為の減少を切に願いたい。
私は、あまり電車を利用しないですが、迷惑行為は、ダメですね、
1人でも少なくなりますよに、お祈り申し上げます。