男性の話を聞いている時に女性がドキッとする事の一つに“一人称の使い方”があります。一人称とは、話の中で自分のことを何と呼ぶか、という事です。

現代日本で普段の仲間や家族との会話においては、地方や年齢、世代によって多少の違いはあるにせよ砕けた表現で自分のことを『俺』という方が一番多いのではないでしょうか。

ですがビジネスシーンでは大抵『俺』はあまり使われることはありません。取引先やお客様、先輩を相手に話をする場合は、『俺』というのは失礼に当たると考えられているので、男性でもほとんどの人が『私(ワタシ、もしくはワタクシ)』を使うのではないでしょうか。『私』はとてもスマートな紳士的な言い方で、かしこまった席にはこちらが相応しいと思われるのです。聞く人に几帳面な印象を与え、清潔感があります。女性が聞いても違和感はありません。むしろビジネスの場で『私』が使えない男性は粗暴な印象を与えてしまいます。

また一部の人は改まった席では『自分』を使うこともあります。一人称に『自分』を使う男性は、上下関係を重んじる硬い印象があります。上下関係が厳しい環境、例えば運動部や武道の経験がある人は『自分』を使う人が多いようです。どんな物事にも真剣に取り組むイメージを与えます。

『私』でも『自分』でもどちらにしても、少し緊張した場面での一人称に違いはありません。ビジネスシーンでなくとも初対面の人と話す場合は一般的にこのどちらかを一人称に使う男性が多いのです。

 

それが少し打ち解けたシーンになると、今度は『僕(ぼく)』という一人称に替わってきます。そうならない人ももちろんいますが、少し砕けた表現なので仲のいい先輩やこれから仲良くなりたい女性と話すときなどにも、使われます。『私』よりも柔らかい、優しい印象になるので『僕』という言い方を好む女性も少なからずいます。それまで会話の中で『私』だった人が『僕』と言い出した時に少し緊張がゆるんだ感じがしてその人に親しみを感じる女性もいるでしょう。

 

さらに本当に近しい間柄の人の前ではザックバランに『俺』という表現になる男性が多いです。この言い方は男の子が小学校に上がる頃から慣れ親しんだ普段の自分を言い表す表現なので、「素のままの自分でいい」と感じた場面で『俺』になるのでしょう。女性の方も『私』や『僕』だった人が『俺』に替わるとぐっと距離が縮まる感じがして「自分のテリトリーに入れてくれたのだな」と思うのです。もちろんそこに辿り着くまでに必要な時間や手順はあります。出会って間もない、さして親しくもない男性が急に『俺』と言ってきたら大抵の女性はその人に軽薄な印象を持ちます。

 

『俺』よりも『僕』の方が上品な感じがして良い、という意見もあります。本人の個性やTPOによっても使い方は変わりますが、この男性の一人称の変化が女性にとっては距離感の変化と感じるのでドキッとするのです。