〔嵐山に春が来た♪〕聡明で笑顔の可愛らしい彼女と結婚を決めた彼。初回相談日には

両親も来社し、息子の結婚を待ち望む親の気持ちが、その言葉からしみじみ伝わって来た。

 病弱の母の世話をしていた父の体調が悪く受診、そして余命告知を受ける事となった。

病床に見舞うと車いすの母は父の傍らで出来るお世話を懸命にされていて心打たれた。

 「お大事に」帰り際の寂静の声掛けに、手を差し伸べ父は力強い握手をし、そして、

か細い声で言った「頼みます」。その手の力強さは今も記憶の中に、掌に残っている。

 改めて父は彼の結婚を寂静に委ね、間もなく安らかに旅立ち、一か月後、旅立った。

介護に努め、両親の葬儀を続けて申し納めた彼は夢中必死の中で、結婚準備を始めた。

 二人の通勤を考慮し、隣町に新居を構える事を決めた彼は、実家を手放す事に決めた。

沢山の想い出を心に刻み、新生活に想いを馳せてほしい。両親も見守ってくれている。

 新しい門出に、実家を解き放つ方は少なくない。亡き人も仏、生きている人も仏。

絆は永遠にある。読経の後、寂静も仏壇の両親と共に一緒に二人の新居へと向かった。

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